英語日記体験談:大学1年生の私が英語日記を続けられた理由と効果

英語で日記をつける

私が英語で日記をつけていたのは、大学1年生の頃でした。大学では英米文学科に所属していたのですが、英語の必修授業の課題として、英語の日記を週に4日以上、約1年近く書いていました。授業の課題ではあったものの、個人的にはとても楽しんで取り組めたし、英語力や思考力向上の要因になったな、と感じています。どうして英語日記を楽しむことができたのか、どうやって自分の力を伸ばすことができたのか、私の実体験を共有します。

英語日記と友達になる

英語日記をつけなければいけない、と言われた時、私が最初に不安に思ったのは「どうやったらきちんと継続できるか」ということでした。

私はもともと、文章を書くのが苦にならないタイプの人間でした。けれども、コツコツ型の学習は苦手で、中学や高校の頃の夏休みの宿題だった英語日記は続けるのがなかなか大変だったので、今回の課題でも継続性が一番の悩みの種となったのです。それも、今回は半年間継続しなければいけないことが分かっていたので、ちゃんと続けられるのか、非常に気がかりでした。

そんな私が英語日記継続のために実践したのは、日記と友達になることです。

英語日記をどんなふうにつけようか、と悩んだ時、ふと頭に思い浮かんだのが、アンネ・フランクの『アンネの日記』でした。世界的ベストセラーであるこの日記は、「親愛なるキティへ」(Dear Kitty)という書き出しで始まっていることが特徴です。この「キティ」はアンネの想像上の友達(イマジナリーフレンド)であると一般的には言われています。戦時下の過酷な経験を、アンネは時に率直に、時に赤裸々に、「キティ」という友達に語るようにつづっていました。

このことを思い出した私は、「私も日記を友達だと思って書いてみよう」と思い立ちました。このやり方が、私にとっては吉となりました。

例えば、「ちゃんとした話題について書かなければいけない」と肩ひじ張ってしまってなかなか筆が進まなかったときがありました。そんなときは、「でも、友達にはくだらない話もするよね」と発想を転換することができ、リラックスして筆を進められました。また、「日記に書くようなネタがない」と焦ってしまった時にも、「でも、友達にはすっごくささいな話だってするよね」と思い直して、小さな出来事を長々と日記につづることもありました。

英語日記を自分の友達だと思えば、日記を書き続けることが驚くぐらい簡単に感じられて、楽しく継続できるようになりました。

英語日記で身についた自分の思考を整理する力

英語日記を継続していくうちに、必要なのは英語力だけではないな、ということにも気づかされました。

英語の文章を一から書こうとすると、ついつい文法だったりボキャブラリーだったりという部分に気を取られてしまう、などという経験はありませんか。私は、そういう経験が何度もありました。この壁に直面するたびに、「私って英語力がないな」「大学受験であんなに単語を覚えたくせに、語彙力がまだまだ足りていないんだな」と、落ち込んで暗い気分になってしまい、英語日記のモチベーションが落ちてしまう、なんてことも少なくありませんでした。

けれども、自分の書きたいことを表現する「上手な言い回し」を学んでいくうちに、だんだんと自分に足りていないのは文法や単語の知識ではなく、思考を整理する力や発想力なのではないか、と気づくようになりました。

日本語は情緒的な言語ですが、英語は論理的な言語です。英語を操るには、論理的な思考が不可欠です。どんなに文法の知識があっても、どんなに語彙力があっても、論理が通っていなければ、英語の文章は成立しません。そして、その論理に必要なのが、自分の考えや書きたいことが「きちんと整理されていること」です。

例えば、英語では先に結論を言ってしまうケースが多くあります。そのためには、先に結論を自分で理解していないといけません。なので、文章を書く前に自分の中ではっきりと結論を見つけて、それにたどり着くまでの敬意を順に整理していく必要があります。これを実際にやってみると、自分の思考が整理されていきます。まるでモーセが海を割った時のように自分の言いたいことの道筋がはっきり見えた瞬間の快感は、一度味わったら何度でも味わいたくなるほど、病みつきになってしまいました。

思考を整理する力がある程度身につくと、英語の文章を書くのが非常に楽になりました。

難しい文法やボキャブラリーにこだわらずに、中学校で学習したレベルの文法や単語だけを用いて、自分の言いたいことが言えるようになり、英語日記を書き続ける時の心的負担がぐっと減りました。また、英語で文章を書く時だけではなく、日本語で文章を書く時にも役立ちますし、物事を理解するのにも非常に役立っていると感じています。化学式や数式、コードを理解するのにも役立つので、さまざまな分野で活躍する、身につけておくべき力の一つと言えるでしょう。

英語日記の効果を海外で実感

英語日記を半年ほど継続したころ、私は海外へ語学文化研修に参加する機会に恵まれたのですが、そこでも英語日記の効果を実感しました。

私が研修で渡航したのは、英語の本場であるイギリスのイングランド地方でした。現地の大学で開講されていた言語学習コースに約一カ月間参加したのですが、多くの場面で英語日記の効果を痛感しました。

最も効果を感じたのは、英語のアウトプットがとても楽になった点です。ライティングとスピーキングは別物、と考えている人もいるかもしれませんが、出力方式が手か口かという違いがあるぐらいで、それ以外はほとんど同じ感覚でした。頭の中で言葉がすんなり出てくる、というのは英語日記を継続していたからこその現象だったと思います。また、友達に話すような感覚で日記をつけていたので、聞き手が日記から人に変わっただけ、という感覚で話せたのも大きなプラスポイントでした。

最初に効果を感じたのは、現地の大学で初日に受けた、クラス分けのための面談試験でした。まずは、言いたいことがきちんとすぐに英語で浮かぶことに、安堵(あんど)しました。さらに、質問にも結論から論理立てて答えられました。面談自体がカジュアルな雰囲気だったということもあり、試験官とは好きな本のキャラクターの話で盛り上がるなど、リラックスして会話できました。これも、英語日記を継続した結果だな、と思いました。

英語日記を書くときに、簡単な文法や単語で文章を組み立てていたこともまた、大きく役立ちました。

現地では、日本人だけではなく主にはヨーロッパの非英語圏の国々からきた人々と同じ授業を受けることになりました。彼らとの会話で気づいたのは、日本の文法と語彙(ごい)のレベルは非常に高いということです。大学受験で必死に学んだ、難しい文法や単語が、他の国の人々には想像以上に通じませんでした。ここではっきりと言っておきたいのは、彼らの総合的な英語レベルが低いわけでは決してない、ということです。同じテストを受けて、同じレベルと判定されて、同じクラスに振り分けられたのですから。

会話の中で、難しい単語や誤解を与えそうな単語を避けて、なるべく容易な文法や語彙(ごい)を使うと、コミュニケーションのスムーズさが格段に上がりました。また、授業中には現地の先生から「日本人は難しい単語を良く知っているね」「そんな難しい文法をよく知っているね。それは古いから、今はみんな簡単なこっちを使っているけど」などと言われることも少なくありませんでした。学問としての英語と実用的な英語の違いを、肌で感じました。正しい文法や幅広い語彙を網羅した学問としての英語も非常に大切です。しかし、世界中の様々な人と交流するためには、実用的な英語が大切なんだな、と思えましたし、そのスキルを伸ばせたのは英語日記のおかげだな、とひしひしと感じた出来事でした。

英語日記は誰かと並走するとよりプラスに

英語日記の継続には、誰かの仲間の助けを借りることも重要です。

何事にも共通しますが、やはり一人で何かを続けることは大変です。悩みを共有したりコツを教えあったりと、誰かと協力することで、モチベーションの向上につながります。実際に私も、大学の授業の課題だったということもあり、同じ学年の友人たちとしょっちゅう英語日記についての話をしました。お互いに愚痴を言うこともあれば、アドバイスすることもあり、それがモチベーション維持につながりました。もともと文章を書くのが苦手、という友人などは私以上に英語日記を書き続けることがつらそうでしたが、最終的にはみんな完走できたので良かったと思います。このように、並走する相手がいることは英語日記を続ける上でとても大切なことです。

また、英語日記を友人同士で見せ合ったり、交換日記のような形を取ったりするのも、英語日記を継続する助けになります。

私の場合は、先生の提案で夏休み明け以降の英語日記は、クラスメートの誰かと交換しながら執筆することになりました。それぞれ自分の名前を明かさないので、交換相手が誰だかわからないというドキドキ感もあり、みんな楽しんで実施できました。日記の内容から交換相手を推測するのは、ホームズやポワロのような探偵気分を味わえて、面白かったです。

それまで私は、友達に話すように英語日記を書いていましたが、実際に誰かが読むことを想定して書くのは、新たな感覚でした。最初は緊張しましたが、だんだんとリラックスして書けるようになりました。相手がいることで、自分の間違っている文法や単語、表現も指摘してもらえるので、英語力の向上にも論理力の向上にもつながりました。また、相手の意見も聞けるので、自分の見識も広がりました。

英語で日記をつけてみよう

英語日記を毎日実践しているような方と比べると、私の場合は週に4日ほどを約一年間継続と、少し短めの英語日記体験だったかもしれません。けれども、その経験はとても大切で、今でも私の英語力や思考力の根幹を担っています。英語日記を続けることで、楽しみながらさまざまな能力を伸ばすことができました。

英語日記を続けることは決して簡単ではありませんが、プラスになることしかないので、関心があれば、まずはぜひ、試してみていただきたいと思います。私の体験談が、少しでもお力になれていれば、幸いです。